一般社団法人 日本私立大学連盟(JAPUC)

スマートフォンの普及とともにSNSの利用も増加しており、昨今は個人の利用だけでなく、企業が情報を発信する手段としても多く活用されている。総務省「通信利用動向調査(令和元年5月31日公表)」によると、10~20代のインターネット利用機器の状況(個人)において、スマートフォンがパソコンを大きく上回っており、高校生や大学生の多くがスマートフォンを利用していることから、大学が独自の専用アプリを提供しているケースも多く見られる。
大学が用いる在学生への情報伝達手段としては、掲示板をはじめ、ホームページやメール配信等を利用することが一般的だが、情報が学生へ届きづらいというデメリットがある。しかし、アプリでは、プッシュ通知機能等の利用により情報の到着がわかりやすくなる。アプリを活用している大学においては、大学ニュースや授業情報のほか、バス時刻表やキャンパスの天気、学生の活躍を知らせる機能等を搭載することで、利便性の高いサービスを在学生に提供している。
また、在学生だけでなく受験生向けの専用アプリとして、オープンキャンパス情報や出願情報の提供、過去の入試問題の閲覧を可能としている大学や、卒業生をはじめとする学外関係者向けの大学ニュース配信アプリなどもあり、アプリの活用事例はさまざまである。
本企画では、大学専用アプリを運用している各大学の事例を紹介し、加盟大学における今後の情報提供サービスの在り方を考える契機としたい。

01学生支援部署における
アプリ活用の取組

中尾 匠吾
青山学院大学 学生生活部
学生生活課兼ボランティアセンター
ボランティアコーディネーター

はじめに

学生生活部では、公認サークル・部活動・ボランティア活動等の課外活動や保険などの福利厚生、スポーツ振興、奨学金、健康管理など、在籍する約1万9000名の学生に対する幅広い支援を担っている。その中で、学生へ必要な情報を伝達し、学生生活の満足度向上に貢献することも役割のひとつである。
本稿では、この役割において一部署として行うアプリ活用の取組について共有させていただく。

アプリ導入の背景と目的

昭和の中頃から、学生生活部では大学の基本情報を掲載した「らいふいんあおやま」という学生向け手引き冊子(以下、手引き冊子)と学生手帳を毎年作成、配布していた。
手引き冊子には手続き案内などの情報を載せていたが学生にあまり見られておらず、質問に来た学生に対して職員が手引き冊子を片手に説明するといった状態であった。また、学生手帳に至ってはある調査で利用率が10%という結果もあった。そのため、単純な質問対応に多くの時間を取られていた。
それに加えて、手引き冊子は年間6000部、学生手帳は年間1万1000部も印刷しており、数百万円ものコストが毎年かかっていた。
また、本学では学生向けのポータルサイト(以下、学生ポータル)を運用しているが、各部署からメッセージを配信しているため情報量が多く、学生からはメッセージが多すぎて見逃してしまうとの声も届いていた。そのためせっかく有益な情報を配信しても開封数が数百程度と少なく、情報伝達がうまくできていない状況であった。
このような背景から情報伝達手段が時代に合わなくなってきていると感じ、コスト削減と学生の利便性・情報伝達の確実性の向上を目的として、紙媒体を廃止して学生にとってなじみやすいツールであるアプリを導入するに至った。

アプリの概要

アプリは手引き冊子の伝統を受け継ぎ「らいふいんあおやま」という名称で2018年3月にリリースした。大学公認キャラクター〝イーゴ〟と非公認キャラクター〝ぎんにゃん〟を起用し、主に〝課外活動や学生生活を送る上で有益な情報〟を写真やイラストを多用したゆるいテイストで発信している。このあたりはアプリならではの特性と部署独自のツールという自由度の高さが生きている。このようなことから学生の個人情報との紐づけはしておらず、図1のとおり既存のツールとのすみ分けを図っている。
アプリの主なコンテンツは(表1)のとおりである。ご関心があれば最終ページのQRコードからダウンロード(以下、DL)してご覧いただきたい。

[図1]学生生活に関わる情報区分

[表1]アプリの主なコンテンツ例

通知履歴 プッシュ通知(スマホ画面へお知らせをポップアップ表示する機能)の履歴。プッシュ通知は更新情報や重要度の高い情報を配信する際に利用している。
学生ポータル TOPページに学生ポータルにログインするアイコンを設け、アプリ経由でログインができる。
営業時間info 事務室や各種学生サービス窓口の開室時間、コンビニ、学食などの営業時間を集約している。
News&info 大学、官公庁、民間団体から寄せられたお知らせ、イベント情報などを掲載している。
学生掲示板 課外活動に関するお知らせの他、学生からの部活・サークルのイベント告知、メンバー募集記事を掲載できる。
お得情報 福利厚生の一環として青学生向けの招待券・クーポン券などの情報を掲載している。
本棚 各部署で発行した学生向け冊子を電子書籍化し、一覧化している。
手続き 各種証明書の発行方法や手続き等に関する案内を掲載している。
各種リンク 独立した項目ではないが、ボランティアセンターやフィットネスセンターなどの所管する各種オリジナルサイトのリンクをアプリへ集約している。

アプリ運用状況と導入による効果と課題

アプリ運用状況

運用を開始して2年以上が経過し、累計ユーザー数は1万9000名を超えた。基本的には新入生へ広報を行っており、入学手続者へ配布する新入生案内冊子へQRコードを掲載しているほか、フライヤーを配布している。ユーザー数・プッシュ通知開封数・閲覧数などの運用データはGoogle Analyticsを用いた週次レポートで把握したものをまとめ、定期的に学生部委員会にて報告している。個別ページの閲覧状況については(表2)をご覧いただきたい。

[表2]個別ページの閲覧状況

スクリーン名 閲覧数
1 通知履歴(プッシュ通知) 74,315
2 今日は何の日?(TOPページ) 51,764
3 ポータルリンク>ポータル内記事A 37,547
4 ポータルリンク>ポータル内記事B 29,003
5 LINK>コロナ関連特設ページ(大学Webサイト) 25,353
6 ポータルリンク>ポータル内記事C 18,782
7 News&Info 18,600
8 LINK>新入生案内(大学Webサイト) 17,482
9 学生掲示板 17,243
10 営業時間info 13,612
11 キャンパスライフ 13,197
12 お得情報! 11,376
  • 対象期間:2020/3/1-3/31(月間閲覧総数は590,754)
  • ポータルリンク>:TOPページに貼付したリンク先を経由した学生ポータルログイン画面の閲覧
  • LINK>:通知履歴(プッシュ通知)や個別記事に貼付したリンク先を経由したWebサイト閲覧

アプリ導入の効果

導入当初の目的としていたコスト削減については、アプリ関連費用が手引き冊子・学生手帳の印刷費用を大幅に下回り、百万円単位のコスト削減に成功した。毎年冊子を印刷していたことを考えると、長期的にはかなりの節約ができたことになる。教育事業は投資に対して何倍ものリターンが生まれる性質ではないので、経常コストの削減には意義がある。また、削減分の一部で留学生向けの生活支援ハンドブックを作成するなど、より細かなニーズに応える施策にも充当できた。
もう一つの目的である学生の利便性・情報伝達の確実性の向上については、(表2)で示した閲覧数のとおり、以前より部署からの情報が届くようになったと感じている。
最新の事例としては、新型コロナウイルス関連が挙げられる。TOPページに大学Webサイト公式情報(閲覧数5位)へのリンクを貼ったバナーを設け、日々変わる情報をタイムリーにプッシュ通知することでアプリが動線の一つとして機能した。新入生案内(同8位)も新型コロナウイルス関連での変更事項を多く掲載しており、まだ大学の各種サービスやコミュニティからうまく情報収集できない新入生に対するアウトリーチとしても有効であった。
また、質という点では、物理的な制約で掲示板に貼付できなかった外部イベントやコンテストをアプリ上で一部記事化したところ、あるプログラミング大会の情報を見た学生が参加し、入賞を果たして大学から表彰されたことがある。日々大量に届いてうんざりする外部からの郵送物の中にも、実は学生にとってキッカケやチャンスになりうる情報があることに気付かされた。
加えて、美術館の招待券や飲食店などの割引情報を掲載したお得情報も好評である。これまで一部の学生しか知り得なかったが、アプリで通知することでより多くの学生に有益な情報が届くようになった。既存の制度との相性も良い。公認団体がイベントを開催する際、チケットを大学が買い取って一般学生へ提供する制度があるが、今まではチケット情報を学生ポータルで掲載しても一枚も提供できないこともあった。イベント告知をアプリ上で行うことで学生に認知してもらいやすくなり、お得情報としても掲載することでチケットがより学生の手に渡りやすくなった。あるアカペラサークルのチケットは例年2~3枚しか提供できなかったのに、買い取った10枚が数日で提供できたのは驚きであった。

運用上の課題

様々な効果を感じる一方で、いくつか課題もある。結局、どんなツールでも利用しない学生は一定数存在するもので、窓口での質問対応が飛躍的に減ったという実感はない。アプリに限らず、時流に乗ったツールを導入するだけでは不十分であり、見ることを習慣に落とし込むためにはもう一段の工夫が必要である。
運用の継続性に関しても課題がある。情報伝達の確実性を維持するには、定期的な情報更新や学生が見たいと思う仕掛けが必要である。企画段階から携わった職員が在籍するうちはモチベーションも高くコンテンツの質を維持できるが、人事異動によって人員が変わってしまうと、途端に更新頻度やクオリティが下がってしまうという事例を聞く。元々は紙媒体の代替であることから必然的な流れであり、見方によっては課題ではない。しかし、〝学生の利便性・情報伝達の確実性の向上〟を具体化する上では継続性を担保する仕組みが必要である。
また、大学全体としての情報伝達という点でも課題がある。学生生活部としては課外を中心とした情報を掲載するというスタンスを取っているが、それ以外の情報はアプリで発信されることは少ない。学生からはもっと多様な情報を掲載してほしいとの声もある。既存のツールも含めて適切なあり方を検討していく必要がある。

今後の展望

展望というほどではないが、運営側がゆるく楽しく続けていくことで、学生も楽しくアプリを使ってくれるのではないかと思っている。
前述の継続性という課題に触れるとすれば、部署の業務フローの中にアプリをもっと位置付けていくことが有効になると考えている。例えば本学の課外活動では、部会(部)が毎年提出する活動報告書などの各種書類が一部形骸化しているという状況があるが、活動報告書の作成段階からデータ化してその情報をアプリ上で記事化し、新入生勧誘や部活動への援助金配分の材料として利用することを考えている。これにより、学生にとっても作業の結果をイメージしやすくなり、より効率化・実質化されると考えている。これは本部組織の学生と運用に向けて協議中である。
他にも、学生の活躍した情報を収集し、学内で周知することを目的とした「青学生をお祝いしたい!企画」なるものを企画している。これは学内のコンビニとコラボして、活躍した青学生(自薦・他薦OK、活躍の内容はなんでもOK)が選んだ商品のセールを企画し、活躍した情報と共にアプリや店頭で広報するというものである。すでに学内の表彰制度との接続も図っており、体育会表彰では受賞者へのお祝いとして体育会の学生が好むサラダチキンをセール価格で販売することが決定している。
アプリを活用したバーチャルなコミュニケーションとリアルな取組を介して、学内にポジティブな輪が広がって欲しいと願っている。